03.綿原君の合流

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 世界遺産登録効果で人が多いのか、道が混んでいたが、無事に駐車場に着いた。部長は車のシフトレバーをパーキングに入れ、キムテンがスマホで「着いたっきゃ」と電話しながら、キョロキョロと人探しをする。まるで小動物だ。  キムテンが車を降りて手を振ると、手を振り返しながら近づいてくるイケメン。長身・短髪で黒と青のツートンのダウンコートをモデルのように着こなしている。同じダウンでもファストファッションの僕と違い、ノースフェイスのヌプシだ。 「キムテンの彼氏、イケメンだね」 「え! 彼氏なんですか?」 「少なくとも、片想いではあるわね。キムテンの顔を見たら分かるわ」 伊桜さんも、ああいうイケメンが好きなんですか? と聞きそうになったが、慌ててやめた。長身イケメン、いやイケオジのフジケンが頭を過ったからだ。伊桜さんは多分、フジケンが好きだ。それは、話している時の表情や声のトーンで分かる。フジケン本人が居ても、居なくても。 小柄なキムテンが薄いピンクのファーコートで跳ねている。長身の彼と歩幅が合わないからだろうけど、飛び跳ねる姿は兎を連想させた。
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