04.雪女

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「寒っ! 地吹雪じゃないですか! 縄文人も凍死しますよ!」  思わず館内に引き返そうとする僕の袖を伊桜さんが「おい!」とツッコミながら、引っ張る。 「和真君、本当に寒がりなんだね」  僕は恨めしそうに地吹雪の向こう側を睨んだ。真冬の三内丸山遺跡は雪で覆われている。 「な、昔がら雨女だはんで、やっぱりたげ雪降ったじゃ」 「めぐせぇはんで、やめでけじゃ」  どうやらキムテンは地元の仲間内ではネタにされるほど、雨女認定されているようだ。北国の雨女は冬に雪女に変わる。雪女といえば妖怪を連想するけど、雪男だと毛むくじゃらのUMAしか思い浮かばない。言葉の持つイマジネーションは不思議だ。  雪女の洗礼を受け、僕達は綿原君を先頭に、一般公開されている一番奥の『縄文のムラ』ゾーンへ向かった。新雪に刻まれた足跡は化石のようだ。
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