05.六本柱

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「この遺跡が終焉を迎えたのは、気候変動、社会生活の激変、ウイルスや伝染病と言われている……。まるで今の私達を取り巻く環境に似ているよね?」  確かに伊桜さんが言う通りだ。何年後、何十年後に振り返った時、僕達は何を思うのだろうか? かつてこの遺跡で暮らしていた人達だって、まさか数年後にここを棄てるなんて思わなかったはずだ。 「なんか、歴史って怖いですね」 「うん。だからこそ、一生をかけて学ぶ価値があるんだよ」  専門家として生きているフジケン。同じ道を歩む決意を持つ伊桜さん。僕が一年後、今の伊桜さんと同じ学年になった時に見るのはどんな景色だろうか。僕は自分の進路という巨大な海の入り江に立ち尽くしていた。古代人は羅針盤なしで原動機もない丸木舟で大海原に飛び出す勇気を持っていたと思うと、文明は進歩したけど、メンタルは後退したのかも知れない。  うっかりホワイトアウトしそうな世界で、僕達は公開されている竪穴式住居で寒さを凌いだ。綿原君とキムテンの説明を熱心に聞く伊桜さん。時折、綿原君の津軽弁が強すぎて、コントのツッコミ役のようにキムテンが軌道修正してくれる。
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