40人が本棚に入れています
本棚に追加
08.あるある
展望所を越えると上り坂だけではなく、カーブも増えてくる。片側一車線の道路で、中央分離帯もなければ、斜面側のガードレールもない。心なしか車の速度もゆっくりになってきた。暫くの間、ワイパーが凍るフロントガラスと格闘していると、なだらかな場所が広がった。
「ここは萱野高原の三杯茶。ただで飲めるんだって」
「その割に車が一台もないけど」
「十一月から冬季休業みたいだね、ほら」
伊桜さんがスマホで検索した画面を見る。一杯飲むと三年長生きし、二杯飲むと六年、三杯飲むと死ぬまで生きるという有名なお茶だそうだ。
「三杯飲むと死ぬまで生きられるって、そりゃそうでしょうよ!」
「私は好きだな。だってさ、飲んだら不老不死とかさ、万病に効きますだったら、胡散臭いけど、死ぬまで生きるだよ。めっちゃ正直じゃん」
「確かに。今度は冬以外に来たいですね。生姜味噌おでんも気になるし」
「へぇー、酸ヶ湯温泉の直営店なんだ」
最初のコメントを投稿しよう!