08.あるある

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08.あるある

 展望所を越えると上り坂だけではなく、カーブも増えてくる。片側一車線の道路で、中央分離帯もなければ、斜面側のガードレールもない。心なしか車の速度もゆっくりになってきた。暫くの間、ワイパーが凍るフロントガラスと格闘していると、なだらかな場所が広がった。 「ここは萱野(かやの)高原の三杯茶。ただで飲めるんだって」 「その割に車が一台もないけど」 「十一月から冬季休業みたいだね、ほら」  伊桜さんがスマホで検索した画面を見る。一杯飲むと三年長生きし、二杯飲むと六年、三杯飲むと死ぬまで生きるという有名なお茶だそうだ。 「三杯飲むと死ぬまで生きられるって、そりゃそうでしょうよ!」 「私は好きだな。だってさ、飲んだら不老不死とかさ、万病に効きますだったら、胡散臭いけど、死ぬまで生きるだよ。めっちゃ正直じゃん」 「確かに。今度は冬以外に来たいですね。生姜味噌おでんも気になるし」 「へぇー、()()()温泉の直営店なんだ」
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