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「和真君?」
物思いに耽っていると、無口になった僕を気にかけたのか、伊桜さんが顔を覗き込んだ。
「あ、はい」
「日本で一番大きい砂丘はどこか知ってる?」
「伊桜さん、馬鹿にしてます? 砂丘っていったら、あれしかないじゃないですか。鳥取砂丘」
「ブブー。残念!」
「噓でしょ」
「正解は猿ヶ森砂丘。青森の下北半島にあるんだよ」
「いやいや。僕も東北人の端くれですよ。そんな砂丘聞いたことないっすよ」
「面積は鳥取砂丘の二十七倍以上」
「絶対噓でしょ。二十七倍って比較にならないじゃないですか」
「菊池、本当だぞ。な、キムテン」
「本当だって。猿ヶ森ってアイヌ語の『サル・カ・モライ』に由来しているんだって」
弁当を食べ終わり、文庫本を読んでいた部長がすかさず参戦し、青森県人会のキムテンが巻き込まれる。
「確か……湿地の上流にある流れの遅い川って意味だよね?」
「さすが伊桜ちゃん」
キムテンは一年生のくせに、伊桜さんをちゃん付けだ。
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