02.サル・カ・モライ

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「和真君?」  物思いに耽っていると、無口になった僕を気にかけたのか、伊桜さんが顔を覗き込んだ。 「あ、はい」 「日本で一番大きい砂丘はどこか知ってる?」 「伊桜さん、馬鹿にしてます? 砂丘っていったら、あれしかないじゃないですか。鳥取砂丘」 「ブブー。残念!」 「噓でしょ」 「正解は猿ヶ森砂丘。青森の下北半島にあるんだよ」 「いやいや。僕も東北人の端くれですよ。そんな砂丘聞いたことないっすよ」 「面積は鳥取砂丘の二十七倍以上」 「絶対噓でしょ。二十七倍って比較にならないじゃないですか」 「菊池、本当だぞ。な、キムテン」 「本当だって。猿ヶ森ってアイヌ語の『サル・カ・モライ』に由来しているんだって」  弁当を食べ終わり、文庫本を読んでいた部長がすかさず参戦し、青森県人会のキムテンが巻き込まれる。 「確か……湿地の上流にある流れの遅い川って意味だよね?」 「さすが伊桜ちゃん」  キムテンは一年生のくせに、伊桜さんをちゃん付けだ。
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