学園と、出会いと。

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「着いた」  ふとユイセルが足を止めたのはそれから程なくしてのことだった。  けして大きくはない花壇。  色とりどりの花々が、そこには配置よく収められていた。  二人で傍にしゃがみ込んで、花を見つめる。 「綺麗だな」  ミナリアは率直な感想を述べた。  豪華さはない。それでも見事に咲き誇っている小ぶりな花の群れに、生命の片鱗を見る。  小さくとも強く、可憐だった。  ユイセルの魔素が花や葉や、土から漂っている。  愛情をかけて育てられたのだと一目でわかる花々を、ミナリアは憧憬の念で見つめた。  いや、けしてユイセルの愛が羨ましいではなく、そうではなく。  ミナリアは思考を追い出そうと、顔を手のひらで覆うつもりで腕を動かした。  わずかに重力を感じて目を向けると、未だユイセルと手を繋いだままだと言うことに初めて気が付く。  思わず振り解くように手を離した。  顔面が火を噴いたように熱い。  ずり落ちた眼鏡の向こうで、驚いた目をしたユイセルがこちらを見ている。  しまった。  目を見られたか?  急いで眼鏡を元の位置に戻す。  変わらず鉄壁の表情を保ったユイセルは、しばし己の手を見つめると、思考停止したミナリアへと手を伸ばした。 「リアも綺麗だよ」  真っ直ぐに目を見て向けられた笑顔に、ミナリアの時が止まった。  綺麗?  俺の目が?  違う。目を見られていたら、こんな反応は。  狼狽するミナリアの頭にユイセルの手のひらが乗せられる。そのまま撫でられて、銀の髪を一房絡められた。  耳から心臓が出ると思わせるほどに鼓動が早い。  綺麗と言われるのにはここ数十年で慣れたはずだった。  ムザルも、カラザールもシャトマーニも、ミナリアを綺麗だと言う。  しかし、その時に感じたお眩い感情とは明らかに様相を異にする異常事態に、ミナリアは立つ瀬をなくした。 「……な、何故頭を撫でるんだ……」  視線を彷徨わせながら口から出たのは、そんな弱々しい拒絶だった。 「……なんとなく」  ユイセルはお決まりとなった言葉を唱えた。  その手はしばらくミナリアの頭を撫で続けていた。
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