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「伊月!」
暗くなった空から白い雪がこれでもかこれでもかと降って来る。
「伊月ー!」
「どこにいるの」
「お願い、返事をして!」
目印も何もない真っ白な世界にぽつんと立って叫び続ける。
降り積もる雪、降り積もる後悔、わたしの頭に肩に、雪が舞い踊り、降り積もる。
伊月と一緒に見た時はあんなにきれいだった真っ白な世界は、ひとりになったわたしに恐怖しか感じさせない。
伊月、伊月、伊月、狂ったように泣き叫び、めくらめっぽうに歩く。
視界は真っ白になり、流れる涙も凍って、感覚が白く冷たくなっていく。
白い世界の中に、全てが消える。
わたしもやがて、降り積もる白い世界の一部となるだろう。
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