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「私は察しが良くないので……。
言ってくれないとセリーナさんの気持ちがわからないんです。
すごく辛そうにしてるじゃないですか。
そんなに悲しそうにしてるじゃないですか。
それなのに、私は黙って見てるしか出来ないなんて、そんなんじゃ私は……。」
私はセリーナさんの近くにいる意味がない。
「ミリは何も悪くない。
これは私の問題なの。だから貴女は気にしないで。」
気にするなって言われて素直に従えるくらいなら、そもそも最初から追い掛けて来たりしない。
その思いは、決してこちらを見ようとはしてくれないその背中には届いているんだろうか。
何とか力になりたいと思うから追い掛けて来たのに、そもそも何がセリーナさんを苦しめているのかすらわからない。
そのことが、たまらなく悔しい。
「私にはわからないんです。
王太子がセリーナさんに謝ったのだって良いことじゃないですか。
それなのに……。」
「良いことですって?」
私の言葉に、セリーナさんが膝に押付けていた顔を上げる。
「貴女、本当にそう思ってるの?」
突然様子が変わったことに戸惑うけど、私はずっとそれを望んでいた。
婚約そのものはなくなればいいと思うけど、王太子との和解はセリーナさんの破滅回避には不可決なはずだ。
「思ってます。セリーナさんは違うんですか?
セリーナさんが破滅を回避するには……。」
私の言葉はそこで途切れた。
ようやく振り向いたセリーナさんが、目に溢れるばかりの涙を浮かべて私を睨んでいたから。
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