プロローグ

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そんな事を考えながら歩いていると、不意に視界が開けた。 これは森から出られた!? 助かった……森の中で遭難っていう最悪の事態は避けられたようだ。 ほっとしつつ周りを見渡してみると、目の前には道と呼んでいいのかな? 見慣れたアスファルトの道路ではなく、ただ単に土を突き固めただけのような。 まぁ、通りやすいように木や草は刈られて、それなりに整備されているようだから道なんだろう。 幅数メートルの道があって、その先にはまた森が続いている。 どうやら、森を切り開くなりして人が通りやすいようにしてあるみたい。 今時、山の中の道でさえもほとんどが舗装されてると思うけど。 ここはそういったことさえされていない程の田舎なのだろうか? それだと、ますます私が住んでいたところとかけ離れ過ぎていて、ここがどこなのか余計にわからなくなる。 うーん、そもそもいきなり森にいた時点で訳分からないし、今さらそれくらい大した問題でもないのかな? まぁ、わからないことを考えても仕方がないか。 一応道っぽいし、それなら誰か通るかもしれない。その時に聞けばわかるだろう。 我ながら楽観的だとは思うけど、悲観的になるよりはいいはずだ。 とりあえず、今考えるべきはこの後どう進むかだ。 まず、先に広がる森に入る。 これだけはない。 そんな事をしたら、今度こそ本格的に遭難してしまうかもしれない。 というか、絶対する気がする。 そうなれば、この道をどちらかに進んで行くのがいいのだろうけど。 人が通るのをこのまま待つのもありかな? さて、どうしたものかと悩んでいると、道の先から何か聞こえて来た。 ガラガラと何かが回転するような音と、パカラパカラッという軽快なリズム。足音かな? 聞きなれない音に、なんだろうと思って音のする方向を見ていると、土煙と共にその音の正体が視界に入って来た。 あれは……馬? それと……え?馬車? 人に会えたという安心感より、現代ではまず見かけない光景への混乱の方が大きい。 え?ここは車もないくらいの田舎なの? いやいや、さすがにそれはないでしょ。 でも実際にいるし……。 私が混乱している間にも、馬と馬車はどんどん近付いてくる。 馬車を中心に、まるでそれを守るかのように前後に馬が2頭ずつ。 もちろん馬には人が乗っているんだけど。 私まで数メートルという位置まで来たところで、馬と馬車が止まる。 近くまで来たことで、馬上の人の姿もきちんと見えるようになったのはいいけど、その姿を見て私はますます混乱する。 これはあれだ。 ファンタジー物の映画とかに出て来る騎士。 鎧っぽいのを身に付けて腰に剣とかぶら下げてるし、間違いない。 でも待って。 なんでそんな格好した人がこんなところにいるの? 「娘、こんなところで何をしている?」 呆気に取られている私に馬上から声がかかる。 見た感じ、服装も外見も日本人には見えなかったけど、どうやら日本語は話せるっぽい。 あ、でも日本でこんなコスプレみたいなことしてるくらいだから日本語が堪能なのかな? 「奇妙な格好をした娘だな。この辺りの者か?」 返事をしない私に、馬上の人から再度声がかかる。 え?私の服装が変なの? 「あ、いえ、たぶん違うと思うんですけど……」 答えながら自分の服装を見てみる。 学校帰りだから高校の制服のまま。ちなみにブレザー。 地味目な制服だけど、別におかしくはない。 むしろ、貴方の方がなんでそんな格好で馬乗ってるんですかと問い詰めたい。 「ふむ。ならば旅人か? しかし、こんな娘が1人で……。しかもその見慣れない服装。異国の者か?」 どうやらこの人の中では私の服装がおかしいというかことは確定事項のようだ。 「いえ、見ての通り日本人ですよ。で、旅人っていうかなんでここにいるんだろうっていうか……」 「ニホン?聞いたことのない地名だな」 そう言って考え込む騎士っぽい格好の人。 え、日本を知らないって意味がわからないんだけど。 ここ日本だよ?あ、JAPANなら通じたりする? 「どうかしましたの?」 私まで考え込み始めたところで、馬車の中から声がかかる。 若い女性だろうか? 声の感じだと私と同じくらいの年齢かな? そう思いながら馬車の方を見ると、窓からひょこっと顔を出した女の子と目が合う。 うわぁ、めっちゃ美人。 鮮やかな赤い髪に、少しきつい感じはするけどぱっちり大きな翡翠色の瞳。 透けるように白い肌に、自然と色付いた唇はふっくらとしている。 芸能人でもこんな綺麗な子いないんじゃないかなぁ。平々凡々な私としてはすごく羨ましい。 思わず見蕩れていると、女の子が私を見て元から大きな瞳を更に大きく見開いた。
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