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「殿下……?」
まるで信じられないものを見るようにセリーナさんの大きな瞳が見開かれる。
セリーナさんだけじゃない。
サーシャもラッセル様も同じように王太子を見ている。
私だって信じられない。
「サーシャの件だけじゃない。
君には他にも謝らなければならない事がたくさんある。」
そんな周りの様子に気付いていないのか、王太子は言葉を続ける。
「10歳の頃に婚約して以来、私は君に対してあまりにも心無い態度で接してしまっていた。」
「殿下?突然どうされたのです?」
驚きのあまり震える声で尋ねるセリーナさんに、王太子はとても悲しそうな、それでいて穏やかな笑顔を向ける。
「どれだけ思い返してみても、君はいつだって完璧な婚約者だった。
立ち振る舞いもそうだし、民への思い遣り溢れる政策だってそうだった。」
「いえ、私は決してそのような……。」
否定しようとするセリーナさんを首を振ることで制し、王太子はなおも続ける。
「それらの為に、君がどれだけの努力を重ねて来たか。私はきちんとそこに向き合うべきだった。
それなのに、私は愚かな決め付けで君を否定して来た。
これはどれだけ謝っても許される事ではないとわかっている。」
「……。」
「今日だってそうだ。
君の立場なら、サーシャに対して複雑な思いがあっただろう。
それなのに、そんなことを全く表に出さずに、こうして私に頼み事をしてまでその身を守ろうとしている。」
突然のこと過ぎて頭が真っ白になっていたけど、これは私達が望んだ以上の結果なのでは?
そう思ってセリーナさんの方を見ると、何故か顔色が真っ青になっている。
一体何故……?
こうして王太子から謝罪の言葉が出たことはセリーナさんの破滅回避には絶対にいい事のはずなのに。
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