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セリーナさんの後を追い、全速力で庭園を駆け抜ける。
すれ違う人が何事かと驚いているけど、今の私にはそんなことに構っている余裕はなかった。
だらけたり大声で笑ったりと普段から公爵令嬢らしからぬ振る舞いの多いセリーナさんではあるけど、第三者がいる場面ではいつだって完璧な令嬢の仮面を付けていた。
それなのに、さっきのセリーナさんは見たこともないほど取り乱していた。
王太子が言っていたように、突然あんな話をされて驚いたり不快に思ったからだとはとても思えない。
長年粗雑に扱われて来た婚約者から、遂に謝罪の言葉が出た。
それは普通に考えたら喜ばしいことのはずなのに、さっきのセリーナさんは全く嬉しそうではなかった。
それどころか、まるで何かに怯えるかのような様子だったし。
疑問は尽きないけど、今はそれを考えるよりも一刻も早くセリーナさんの元に行くことが大事だ。
今のセリーナさんを1人にしてはいけない。
そうしてしまったら、取り返しのつかないことになる。
根拠はないけど、確信に近いそんな不安を感じつつ、寮の階段を一気に駆け上がると部屋へと飛び込むようにして駆け込む。
普段過ごしている居間にはその姿はなかったけど、奥にある寝室へと向かう扉が開きっぱなしになっている。
「セリーナさん?」
乱れる呼吸を整えつつ寝室を覗き込むと、こちらに背を向けたままベッドの上で膝を抱えて蹲るセリーナさんの姿があった。
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