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「セリーナさん、一体どうしちゃったんですか?」
「……。」
その背に向かって問い掛けるも、反応はない。
追い付いて来たマリーさんとサーシャも、心配そうにしている。
「お嬢様……。」
「セリーナ様?」
「なに?みんな来ちゃったの?殿下がいるのにダメじゃない。」
2人の問い掛けに、ようやく返事をしてくれたセリーナさんだけど、その声はこれまで聞いたことがないくらいに暗く沈んでいる。
「王太子殿下がお嬢様の元へ向かうように仰ったのです。ですから、そこは心配いりません。」
「そう……。殿下が……。」
「セリーナ様、王太子殿下の話された内容がそれ程不快だったのですか?
確かに私も驚きはしましたけど……。」
「違う。」
答えてはくれるけど、顔はあげてくれないし、こっちを見ようともしてくれない。
その姿が、まるで私達を拒絶しているかのようで胸が苦しくなる。
「それでしたら、一体何がお嬢様のご気分を害したのでしょうか?
どうか教えて頂けませんか?」
「もう私のことはいいから。放っておいてくれないかな?」
悲しそうに尋ねるマリーさんの言葉を完全に拒絶すると、もう話すことはないとばかりに黙り込んでしまう。
「ミリちゃん、マリーさん。ここは一度少し時間を置いた方が……。」
「えぇ、そうですね……。」
その言葉に2人は寝室を出ようとしたけど、私はどうしてもその場から動く事が出来なかった。
あんなに辛そうなのに。
あんなに悲しそうにしてるのに。
1人になんか絶対に出来ない。
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