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「お嬢様の負けですね。」
そこにいたのは、いつものように穏やかな微笑みを浮かべるマリーさん。
その後ろには、涙で顔をぐちゃぐちゃにしているサーシャの姿も見える。
「そんな負けって言われても……。だってそれじゃ……。」
「だっても何もない。私はそんなの絶対に……。絶対に許さないから。」
セリーナさんがずっと自分の破滅回避にだけは消極的なのはわかっていた。
でも、その理由がこんなことだなんて思いもしなかった。
全部の不幸を自分だけが背負い込むつもりでいたことに、驚くよりも腹が立って、何よりも悲しくてたまらない。
それに何より、ずっと近くで一緒に過ごしていたのに全く気付けなかった自分自身が情けなくて悔しくて。
いつも自分のことは後回しで、人のことばっかり考えているセリーナさんの性格を考えればわかることじゃないか。
それなのに、私は一体何をしていたんだ。
そんな自己嫌悪にも陥って。
もう、頭の中も気持ちもぐちゃぐちゃのごちゃごちゃでおかしくなりそうだった。
「ミリ、貴女の気持ちは嬉しいけど……。」
落ち着きを取り戻したセリーナさんが、優しい声でそう言ってくれている。
ほら、今だって自分だって辛いのに、また私に気を使っている。
「でも、私はそれじゃ嫌なの……。嫌なんです……。
セリーナさんも一緒に幸せになれないなんて、そんなの絶対やだよ……。」
いつの間にか溢れて来た涙を堪えることも出来ず、嫌だ嫌だと繰り返すことしか出来ない。
「ミリ……。ありがとう。ありがとうね……。」
そう言ってぎゅっと抱き締めてくれるセリーナさんに縋り付き、私はまるで幼子のように泣き続けた。
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