14章

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「私はね……。」 泣き続ける私を抱き締めたまま、セリーナさんがぽつりぽつりと話し始める。 「私自身の破滅は回避出来ないってずっと思ってた。 小さい頃は何とかしようと思ってたけど、何をやっても上手くいかないどころか逆の結果にしかならなかったし。」 その話は以前にセリーナさん自身から聞いたことがあった。 婚約回避に始まり、王太子の心象をよくしようととして行った全てが、逆に心象を悪くする結果にしかならなかったと。 「だから、せめてそれなら周りへの被害を少なくしたかった。 ゲームのシナリオでは、私の破滅と同時に公爵家も没落するの。 それだけは避けなくちゃって。」 話が出来る状態じゃない私だけではなく、マリーさんもサーシャも黙ったまま、セリーナさんの独白に耳を傾ける。 「でも、それも思うようにいかなくて、毎日私はなんでこの世界に転生したんだろう。 なんで前世の記憶なんか取り戻しちゃったのかなって。そればっかり考えてた。 こんなことなら、何にも知らないでいた方がずっと良かったって。」 初めて公爵家に来た時に、マリーさんから聞かされたことを思い出す。 その当時のセリーナさんは、毎日ずっと何かに悩んでいるようで元気がなかったと。 「でもね、そんな時に出会ったのが、ミリ。貴女なのよ。」 私を抱き締めるセリーナさんの力が強くなる。 苦しいくらいの力なのに、何故かそれはとても心地好く。 どこか懐かしい気持ちになる。 まるでずっと昔から知っていたように。
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