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そう言って笑うセリーナさんの表情はとても悲しそうだった。
「それでね、今日殿下と話して。
想像もしていなかった謝罪の言葉を受けてね。
何よりもまず、怖くて怖くて仕方なかったの。
殿下の謝罪を受け入れてしまったら、私の破滅という結末が変わってしまうかもしれない。
そうなってしまった時、これまでのように強制力の反発が起きたら、何が起こるのかわからない。
だから、この謝罪は絶対に受け入れたらダメだって。」
セリーナさんがあれだけ取り乱していた理由はよくわかった。
この人が底抜けのお人好しであることも。
自分が破滅することで周りに被害がなければそれでいいと心の底から思っているし、そうなっても後悔はしないんだろう。
でも、それでも本当は……。
「本当はセリーナさんだって破滅なんかしたくはないですよね?」
そうじゃないなら、今こんなに悲しそうな顔なんてしないはずだ。
「ミリ、それは……。」
困ったように笑うセリーナさん。
私はこの人のこんな顔が見たいんじゃない。
いつもみたいに、まるで公爵令嬢らしくなく、豪快に楽しそうに笑う顔が見たい。
「さっき散々言ったじゃないですか。
セリーナさんが幸せになれないなんて、絶対嫌だって。
そんなんじゃ、私だって絶対に幸せになんかなれないって。」
「ミリ、貴女がそう言ってくれるのは本当に嬉しい。
でも、それじゃダメなのよ。」
「なんて言われても私は諦めません。
それに、そう思ってるのは、私だけじゃないはずです。」
「お嬢様、ミリの言う通りですよ。」
「セリーナ様!!」
私の言葉に、マリーさんとサーシャが頷く。
2人の表情はとても晴れやかで、絶対に諦めないという強い意志を感じた。
「貴女達……。」
「だから、みんなで最後の最後まで足掻いてみませんか?」
ニカッと笑って言う私に、マリーさんとサーシャも同意するように頷いてくれる。
「本当に……。揃いも揃ってバカなんだから……。」
そう言いながらも、笑顔を見せてくれたセリーナさんの目から、一筋の涙が零れ落ちた。
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