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間章 王太子
私は幼少の頃からずっと、将来この国を治める者としての教育を受けて来た。
周囲の大人達からはとても大切にされて来たし、それが私への期待から来るものだということもわかっていた。
幸いなことに、私はその期待に応える事が出来るだけの資質は持ち合わせていたらしく、国王と王妃である両親もそんな私を見て満足そうにしていた。
両親は、私にとってまさに理想の国王であり、王妃であり、夫婦であった。
国民や貴族達から名君として敬われる父王。
そんな父を公私両面で支え、賢母として慕われる母。
そんなお2人を間近で見て育った私は、将来自分も王妃を迎える時には、両親のような夫婦になれる相手を探したいと思っていた。
だからこそ、突然父から告げられた婚約話には不満しか無かった。
相手は、筆頭貴族であるラズウェイ公爵家の令嬢だという。
王太子、時期国王と言う立場上、幼少期から何人もの令嬢を紹介されて来た。
その誰もが、王太子としての私にしか興味がなく、欲しているのは私自身ではなく将来の王妃という立場でしかないのが透けて見えていた。
ラズウェイ公爵令嬢とは面識はなかったが、どうせ彼女もそうに違いないと思った。
なんでそんな令嬢と婚約なんてしなければならないんだ。
そう思いはしたが、父の命令である以上は逆らえるはずもなく、私は嫌々婚約を結んだ。
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