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ラズウェイ公爵令嬢セリーナは、模範的な貴族の令嬢に見えた。
立ち振る舞いには一部の隙もなかったし、私の両親にも気に入られていた。
確かに優秀な令嬢ではあると思った。
だが何故だろう。
いざ彼女を目の前にすると、頭に靄がかかったようになるし、その全てが気に入らなかった。
普段の私なら、相手に対してどんな感情を持っていようがそれを隠して接することが出来た。
王太子という立場で、いちいち人の好き嫌いを表に出していたら、色々と差し支えるからだ。
しかし、セリーナに対してだけはそう出来なかったし、しようともしなかった。
そうする必要がないとすら感じていた。
そうやって私が嫌っているというのを全面に出していたからか、婚約してしばらく経つと、セリーナから婚約を辞退したいと言われた。
冷静に考えてみれば、これだけ露骨に嫌っているのだからセリーナがそう思うのも無理はないのだろう。
しかし、当時の私には、それすらも彼女が私の機嫌を取ろうとしている行動にしか見えなかった。
それでもセリーナは、文句ひとつ言わずに王太子妃としての教育を受けていたのを見て、やはり単なるご機嫌取りだったのだと勝手に確信していた。
また、彼女はそれに留まらず私でも驚くような施策を多数献策してきた。
どれもが多大な国益をもたらしていたが、私はどうせそれも周りの大人が考えたものを自分の手柄だとして吹聴しているだけだとしか思えず、彼女への嫌悪を強めただけだった。
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