間章 王太子

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その後も、あのミリという侍女と話をする機会があった。 彼女は、いつでもセリーナのことを誇らしげに語る。 挙げ句には、セリーナが自分の命の恩人であるとまで言う。 セリーナがまさかそんなことをするはずがない。 そう思うのと同時に思い出す。 私の機嫌取りのために周囲の大人に考えさせたと思っていた数々の施策。 そのどれもが、多くの弱く貧しい民達の命を救って来たことに。 王家ですら、あの両親ですら成し得なかったことをセリーナがしていたことに。 それと同時に、この少女と話していると、頭にずっとかかっていた靄が晴れていくような感覚も覚えた。 それが決定的になったのは、サーシャとセリーナが茶会をしている場面に遭遇した時だった。 最初にその場面を見た時、私は無意識にセリーナを責め立てていた。 サーシャに何か危害を加えようとしていたのではないか。 私と親しくしているサーシャに嫉妬しているのではないかと。 しかし、激昂する私に対し、セリーナはとても冷静に反論してきた。 いつものように、冷たく冷え切った瞳で。 セリーナが私にこう言う目を向けるようになったのはいつからだろう? 幼い時は、少なくともこんな目で私を見ることはなかったはすだ。 頭の中ではどこか冷静にそんなことを考えつつ、それでもなおも言い募ろうとする私に対し、予想外に人物が声を荒らげる。 それはサーシャだった。 明るくはあるが、どこか気弱なところがあるとばかり思っていたサーシャの姿に面食らったが、言っている内容はどれも正論だった。 そうだ。 サーシャの言う通り、私はセリーナが非道なことをしているのを実際に見たことは一度もなかった。 むしろ、彼女がして来たことは全てその逆だったではないか。 私は誰よりもそれを知っていたはず。 それなのに。 何故私はセリーナをあんなに嫌っていた? 何故私はあんなことを彼女に言ってしまったのだ?
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