間章 王太子

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自分のした事が信じられず、セリーナとサーシャが立ち去った茶会の会場で呆然と立ち尽くしていると、あの侍女の姿があった。 どうやら一人残ってあと片付けをしているらしい。 不思議とこの侍女を前にすると、頭の中がすっきりとする。 そして気が付く。 セリーナを前にすると、いつも頭の中に立ち込めていた靄が完全に消え去っていることに。 同時に、私がセリーナに対して許されざる行いをしてしまったことにも。 本当はすぐにでもセリーナの後を追い掛けて謝罪したかった。 しかし、公務が控えていたため、侍女に謝罪の言葉を伝えて欲しいと頼むことしか出来なかった。 今日のことだけではない。 これまでのことを謝罪したい。 そう思いはするものの、今更どの面下げてそんな事をすればいいのか。 そんなことを考えて悶々とした日々を過ごすうちに、季節は巡り豊穣祭の季節になってしまった。 例の茶会以来、セリーナとは話せていなかった。 学内で姿を見かけることはあったが、まるで私を避けているかのようにすぐにどこかへと行ってしまう。 だが、それも当然のことだ。 そうされてしまうだけのことを私は今までして来たのだから。 この会えない期間に、これまでのセリーナの功績を改めて調べてみた。 両親にも、彼女のことを聞いてみた。 その結論としては、やはり彼女は私が思っていたような女性ではなかったということ。 公爵令嬢としても、将来の王太子妃としても非のつけ所がない完璧な姿がそこにはあった。 しかし、私にもう彼女の婚約者を名乗る資格はないのかもしれない。 これまでの自分の愚かさに腹が立って仕方がなかったが、まずは何よりもセリーナに謝りたかった。
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