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「待たせてしまったかしら?ごめんなさいね。」
そう言いながら席に着くセリーナさんは、どこか疲れた様子。
相当急いで来たのかな?
「大丈夫ですよ!私達も今来たばかりですから!」
そう言って笑顔を見せるサーシャに、セリーナさんも笑みを返す。
「ちょっとルシャール侯爵令嬢に捕まってしまって.......。」
「あぁ.......あの方ですか.......。」
「それは災難だったな。」
セリーナさんの口から出たルシャール侯爵令嬢と言う名前に、サーシャとラッセル様が苦笑いしている。
2人も面識がある相手なのかな?
そう思いながら、かつて学んだ貴族名鑑の記憶を引っ張り出す。
ルシャール侯爵家。
確か建国初期から続く家柄で、ラッセル様のラッセル侯爵家と並び侯爵家の中でも特に力のある家柄の一つだったはず。
ご令嬢のお名前は.......カレン・ルシャール様だったかな?
「そうなのよ。昔から色々嫌味は言われて来たけど、最近は特に酷くて。
サーシャは大丈夫?」
「私は逆に、以前みたいに嫌味を言われることはなくなりました。
ただ.......。」
少し言いにくそうに言葉を切るサーシャ。
しかし、セリーナさんが以前言っていた嫌味を言ってくる令嬢ってルシャール侯爵令嬢だったのか。
まぁ、ルシャール侯爵家くらいの家柄ならセリーナさんに対して色々と言えないこともないのかな。
「最近は何も言われない代わりに、ゾッとするような怖い目で睨まれる事が多くて。
妬まれていると言うより、まるで憎まれているみたいで、正直怖いです。」
「ルシャール侯爵令嬢もかつては殿下の婚約者候補の一人だったからな。
お二人に対して色々思うところがあるのかもしれない。」
「うーん。確かに気の強い方ではあるけど、それでも越えてはいけないラインはきちんとわかっている方だったはず。
何だか気になるわね。」
セリーナさんの言葉にサーシャも頷く。
「心配なようだったら、俺から殿下にも相談してルシャール侯爵令嬢の動向に注意を払うことにしよう。
ところでセリーナ嬢。殿下と言えば先日の件なんだが.......。」
少し言いにくそうにするラッセル様。
この前のお茶会の時のことを聞きたいんだろうな。
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