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そして翌日。
授業から帰って来たセリーナさんがようやく書き終えた手紙を持参し、ラッセル様の寮へと向かう。
昨日お茶会から帰って来てからもずっと書いてたから、相当悩んだ末の力作であることは間違いない。
確実に届けないと。
そう思って表情を引き締めようとは思うんだけど、どうしてもにやけてしまう。
だってさ、やっぱり未だに王太子のことは好きになれないけど、セリーナさんとの関係が良くなるのは嬉しいんだ。
もちろん、何とかしないといけない問題がまだまだ残ってることはわかってる。
それでも、セリーナさんも破滅を回避して、みんなで幸せになる為の大きな一歩なのは間違いないんだから。
「お?ミリか?随分楽しそうにしてるな。」
もう少しで寮へ着くというところで、唐突に声をかけられてびくっとする。
しかも、にやけてるところを見られたっぽい。
恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じながらぺこりと頭を下げる。
「例の手紙を届けに来てくれたのか?
それなら、ほら。
俺にじゃなくて、直接お渡しすればいい。」
「?」
どういうこと?
と思って顔をあげると、そこには穏やかに微笑む王太子の姿。
「で、殿下!?」
一瞬上げた頭を慌てて再び下げる。
まさか一緒にいるとは思わなかった。
いや、ラッセル様は元々王太子の護衛でもあるから、一緒にいるのはおかしくないんだけど、ラッセル様の寮へ来てるとは思わないじゃん?
「あぁ、ミリか。気にせず頭を上げてくれ。
ところで、手紙というのは?」
「セリーナ様から王太子殿下へのお手紙をお預かりしております。」
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