Continuation of nightmare

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* ”真っ赤な悪夢”は知らず知らずのうちにぼくの中で無意識と結合し、脳裏にこびりついて離れなくなった。 思いあたる節はたくさんある。どれもよくないことばかりだ。 ぼくは元軍人で、人殺しで、いまは国際組織の使用人。 ぼくらFrontier interactive社の特殊作戦チームは現在(いま)、国連安全保障理事会がPKOの名のもとに設立したヴァンクシア暫定統治機構と共同で、ジュネーヴの規約に基づいた軍事作戦を展開中――――。 1989年の冷戦終結に伴い、各国軍事部門に生じた大量の余剰人員は民間に流れ、軍事民営化の潮流は加速した。 21世紀における情報学と人間工学のインタラクションがもたらした3度目の軍事革命(R M A)合衆国(ステーツ)をはじめとするG8諸国は最先端・高技術兵器の開発に没頭し、結果、それらのノウハウを有する民間軍事会社(PMCs)の受容をさらに拡大。 自明で不変と言われてきたマックス・ウェーバーのテーゼからなる国家の存立・維持に関する一般的な認識の数々を覆した。 さらにその翌年、国連(UN)は長すぎるドラマは見飽きたとばかりに遠隔臨場操作(テレイグジスタンス)戦闘用代理機兵(コンバットエージェント)を世界各地の”前線なき戦場”に投入。 剛性と柔軟性を内包した外骨格と義肢、高性能な射撃ソフトを搭載したヒト型の戦闘機械たちは生身の兵士を遥かに上回る高い敏捷性と機動力を発揮、 武力抵抗を試みる諸勢力を完膚なきまでに打ち負かし、”国力の差”という圧倒的な現実を残忍な独裁政権、機能不全の国家の眼前に突きつけた。
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