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「仕事をこなす」ためにぼくはシンプルな世界観を構築した。
人間が道徳的ジレンマを解消するための手段の一つ。
問題の規模を縮小し、無数の集団の間に張り巡らされた因果関係の複雑さを単純明快な筋に置き換える。
一方が善人で、もう一方が悪人という構図を生み出し、錯覚の世界に生きることをよしとした。
けれど、そんな刹那的で自分勝手な生き方が長く続くはずもなく、
結局、罪悪感の波にのまれて道を見失った。
ぼくの横でいま、これまで誤魔化してきた声たちがゆっくりと目を覚ます。
目隠しをしたって無駄だ、人殺し。
見ろ、お前の後ろを。
血と涙に塗られた不浄の道が続いている。
これが、貴様の背負うべき”罪”だ。
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