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現実の重圧に耐えられなくなって倫理の壁を越えた人々と、生物と機械のハイブリッドを操って武力による統治を推し進める第三者機関。
アルゴリズムによって力を与えられたエリート層と時代の流れに取り残された膨大な数の個人との間で繰り広げられる”結果の分かりきった代理戦争”。
今の流行りは自分の代わりとなる何かと誰かを戦わせること。
主要国の兵士たちは戦場より遥かに離れた場所から意識だけを転送し、自らは赴かない。
ハイテク兵器が導入されたことで、一つしかない命の奪い合いであるはずの戦争は、片方だけに不要な死と破壊をもたらす気まぐれで破滅的な遊戯に成り下がった。
魂のないガラクタと生身の人間では天秤にのせる命の重みが釣り合わない。
――――マウスのクリックがもたらす平凡な破局。
ちなみに、ぼくはそうした世界の流れの中、軍にいた頃の実績を買われ、再びヒト型起動兵器の制御員の一人に選出された。
悪魔の声に導かれたぼくは安寧な余生をかなぐり捨てて、暴力と脅迫がすべてを支配する血と汗と悲鳴と臓物の世界に戻ってきた。
混乱と死をもたらす殺人機械の主人、大鎌の使い手として。
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