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「スカーレット少尉……少尉‥‥‥」
自分の名前を呼ぶ声に気付いて、瞼を開く。
会議で渡された資料を読みこんでいるうちに眠ってしまったようだ。
若い搭乗員がぼくの体をゆすっている。
機はすでに着陸態勢に入っていた。
まだ、頭がぼんやりしている。
”真っ赤な悪夢”から戻ってきた時はいつだってそう。
デジャヴの中でデジャヴを見ているような、酷い二日酔いの気分。
「立てますか、少尉。よろしければ、お手伝いしますよ」
疲れ切った表情のぼくに搭乗員はそう言って、気さくな笑みを向けてくる。
すらりと細身の浅黒い肌の青年。微かに幼さが残る顔立ち。
合衆国の人間ではない。
着ている制服の色から民間契約者だと分かる。
「ああ、頼むよ」
ぼくは彼の好意に甘えることにした。
カーゴベイの奥に収納された車椅子を指さす。
相変わらず、戦場以外ではお荷物だ。
誰かの手を借りないとやっていけない。
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