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「さあ、つかまってください。ゆっくり、ゆっくり‥‥‥焦らないで」
「悪いね」
「いえ。あなた方を無事に送り届けるのが任務ですから」
揺れがひどかったけれど、何とか座ることができた。
手伝ってくれた青年に改めて礼を言う。
すると、彼は律儀に敬礼をして立ち去っていった。
「低賃金で雇われ、過酷な業務に従事させられた挙句、仇である俺たち制御員の為に空と大地を行ったり来たり‥‥‥健気なこった」
不意の声にかたわらを見やる。
ぼくと同じ、Frontier interactive社のロゴ入り戦闘服に身を包んだバーナードが近づいてきて、
「こんなに国連(UN)の統制が行き届いていないケースは初めてだ。
おい、ウェイロン。ここの連中、やりたい放題だぞ」
「というと」
「さっき、お前が話していたのはガキだ」
「え」
「身分保障IDの偽造、詐欺的契約。平和ミッションにおけるPMCsの需要が拡大して、兵站支援業務を支える雑用係が不足しているんだよ。だから、その分を第三国の安い労働力で補おうとしてる」
貨物室の中を動き回る灰色の制服を来た若者たち。
その中にさっきの搭乗員の姿もある。
彼は、何歳なのだろう。
バーナードの言葉にそうか、とだけ返す。
別に珍しいことじゃない。よくある景色の一部だ。
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