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「ま、考えるだけ無駄か。俺たちは軍をやめたが、戦争に協力する立場であることに変わりはない。心を無にして、役割に徹するだけ。なぜと問うてはならない。いつも通りだ」
バーナードはそう言って、息を吐く。腹の底にたまった邪悪を吐き出すように。
ボディーガードのような屈強な見た目とは裏腹に心は複雑で繊細。
こいつは結婚して、妻と子を得てから変わった。
色々なことを見過ごすことができなくなった、と本人は言う。
特に子供のことに関しては。
バーナードはぼくの後ろに回り、車椅子を押し始める。
「司令部からの通知。どうせ、見てないんだろ」
「ああ。今言ってくれると助かる」
「ひとつ貸しな。いいか、第三チェックポイントが襲撃を受けた。相手はヴァンクシア自由民主戦線とかいうふざけた名前の連中だ」
「手強いのか」
「国防情報局がまとめたレポートによれば、何らかの電子対抗手段を有しているらしい。数日前、制圧に向かった正規軍のコンバット・エージェントランナー小隊がまんまとデコイを掴まされた挙句、返り討ちに遭ったんだと」
なるほど。
それで現地部隊はすっかり自信を無くし、結果、ぼくらにお鉢が回ってきたというわけだ。
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