プロローグ 「ソフィへ」

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プロローグ 「ソフィへ」

   私がここに書き記そうと思うのは、物理的には実証不可能だけれど、確かに私の身に起こっている終わりのない「91日間」の話です。  このループは「91日目」にある意味での終わりを迎え、記憶を無くし再び「1日目」に戻されます。  この現象が起こっていることを私自身が認識していられるのは、限られた時間のみです。だから私は今、その限られた時間の中でその概要を書き記しています。  人間にとっての「死」というものがどれほど重要であるかと言うことが、今の私には分かります。  今の私は例えるなら消滅しそこなった細胞です。  人間の細胞というものは1日で4000億が消滅し、生まれ変わると言われています。そういった仕組みが元々、人間の身体には生まれた時からシステムとして組み込まれています。  ただ、中には何らかのエラーにより「消滅(死)」することなく、定められた期間を超え、生きながらえ、傷み。そして異端へと変貌していく細胞もあります。  そういった細胞は、周りの細胞から部外者とみなされ敵対します。  そういったものを医学では、 「(がん)細胞」と呼びます。
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