第3話:少年とマッチョ

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 お姉ちゃんに言われて樹が駆けつけると、歩道にお婆ちゃんがぽつんと立っていた。幽霊なので誰も気づかずに通り過ぎていく。 「お婆ちゃん!」  樹はお婆ちゃんに声をかけた。  お婆ちゃんは樹に気づいて振り返る。だが相変わらず声を発することはない。  周りを見てもそばにいるはずの岩渡はいなかった。岩渡とはぐれてしまったのだろうか? だが幽霊が、憑いている相手とはぐれることなんてあるのか? 「……」  無言のお婆ちゃんは樹たちと目が合うと、ぷいっとそっぽを向いた。 「なに? シカト??」  お姉ちゃんがむっとする。  だが樹はそっぽを向いたお婆ちゃんの前に回り込んでみて気づいた。お婆ちゃんは上を見上げていた。しゃべれないお婆ちゃんは「その方向を見ろ」と訴えているのかも知れない。  つまり、その視線を追いかければ——。
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