第3話:少年とマッチョ

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 樹はお姉ちゃんと一緒に階段を駆け上り、雑居ビルの屋上へ急ぐ。  必死だった。団地ではいつもエレベーターを使う。こんな必死に階段を駆け上がったことなんてない。  ゼイゼイと息を切らし、ふらふらの状態で屋上にたどり着いた。 「や、やめてください! 死なないでください!」  そのままの勢いで手すりに手をかけて下を見下ろしている岩渡に体当たりするように飛びかかる。 「わっ、ちょ、ちょっと! うわ、うわわわわ!!」  逆に落ちそうになった。よろめいて上体が空中に放り出されそうになるのを、なんとか強靱な体幹でこらえる。  ぐっ、ぐぐぐっ!  無理矢理、上体を引き戻して岩渡は屋上側に尻餅をついた。
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