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ゴングが鳴る。
試合が始まった。
岩渡はゴングと同時に突進するようにイケメンレスラー、早乙女拓斗の方へと向かう。
拓斗が迎え撃つ形で二人は組み合った。ロックアップという力比べだ。
八百長の話は向こうにもいっているはずだった。
だがリング上で「やっぱ八百長はなしにしよう」なんて野暮なことは言わない。プロレスラー同士だ。言葉など交わさずとも戦えば伝わるものだ。
「なるほど、ガチでやろうってことね。おもしろいじゃん」
岩渡と組み合った状態で拓斗はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
ギリギリと岩渡の力が伝わってくる。そこに想いが乗っている。
事前の話し合いなど関係ない。最後は実際にリングの上に立っている者同士が決めることだ。
その無言のメッセージを拓斗はしっかりと受け止めていた。
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