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農村の少女
ここは中国の農村部の小さな村。私達村民は田畑を耕しながら暮らしております。
私は2年前村の小学校を卒業し今は村の畑仕事を手伝っております。母は私が幼い頃に亡くなり、父と弟と妹と4人家族です。
あっ申し遅れました。私の名前は鈴明です。鈴明とかいて「りんめい」と読みます。今年で14才になる普通の少女です。
「姉ちゃん!!ご飯まだ?」
「はいはい。」
私を呼ぶのは弟の甲賀です。まだ9才で村の小学校に通ってます。
「お姉ちゃん!!お弁当」
「ちょっと待って。」
お弁当をせがむのは私の妹蓮歌。5才です。私の朝はいつもこんな感じで大忙しです。
母が亡くなったのは私が10才のときです。
一番下の蓮歌はまだ赤子だったので母の記憶はほとんどありません。甲賀は当時5才。今の蓮歌と同じ年でした。母が一番恋しい時だったので毎日寂しくて泣いていました。
私はというと悲しいわけではありませんでした。しかし長女である私は悲しむ暇なんてなく、朝は朝食とお弁当を作って弟と妹と一緒に学校に行き、帰ってきたら宿題を終わらせ夕食の支度。それが私の日課でした。
そして今は小学校を卒業し家と畑を往復する日々です。
「なあ、姉ちゃん。中国には今度日本人がやってきたんだって。」
「誰がそんなこと言ってたの?」
「先生。」
私達田舎には新聞配達なんて来るはずがありません。
私達は甲賀の学校の友達や先生、私達が育て野菜を買い取りに来る業者の方の話から情報を仕入れていました。
当時この大陸はイギリスやフランス、ヨーロッパ人達の疎開がありました。彼らはこの地で商売を始めてるのです。その一方で私達中国人の居場所が奪われ中国人が働ける場所が限られているのが都心部の現状でした。
「ねえ、お兄ちゃん。」
「何だい?」
「じゃあ日本人がやって来るってことは中国人はどんどん居場所がなくなっちゃうってこと?」
「そういうことだな。」
居場所がなくなる。
どうして他国はこの中国にばかりやって来て私達の居場所を奪うのか。全く理解できませんでした。しかしそれは都心部の話。農村にいる私は今までと変わらず畑を耕すだけ。
その時はまだ甲賀の話を聞いても正直人事のようにしか思えませんでした。その時は。
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