誤解です!

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誤解です!

「…君がミナか?」 久しぶりの休日に突然現れた嵐だった。うっかり玄関ドアを開けたら、そこには圧の塊が佇んでいた。人より大きな身長、きっと190cm近くだろう。横にもガッチリしていて、圧が凄い。そして厳しい顔つき。日本人にしては彫りが深くて、怖い感じだ。 「あ、あのどちら様…?」 目の前の男は、更に高圧的に言い放った。 「君がミナなんだな?」 私は思わず相手の男の圧に負けて頷いてしまった。これが全ての間違いだと思わずに。男は眉間に皺を寄せて私を睨みつけた後、玄関から見えるリビングを覗いてつぶやいた。 「…人を食い物にする割に片付いてるじゃないか。もっと汚部屋かと思ったが…。」 私の耳は地獄耳。特に悪口は聞こえるんですからね⁉︎ 私は頭に血が昇って、この無礼な男に指を突きつけると言った。 「貴方誰なの⁉︎いきなり人の家に訪ねてきて、無礼な口の聞き方ね⁉︎ しかも失礼な事言って。私は身も知らずの貴方にそんな事言われる筋合いないわ!」 私は普段出した事のない大きな声で、普段言ったことのない文句を言い放った。私は会社でも菩薩と言われてるのに!私はこんな嫌な自分を引き出したこの男を憎たらしく思った。男は片眉を上げるとニヤリと笑って言った。 「…私の聞いた通りのミナだったら、そうでなくちゃな。いいか、私をあいつのように簡単に騙せると思わない事だ。あいつは君に弄ばれたおかげで、ヤケになって、前後不覚に酔っ払って階段から落ちたんだ。一時は意識不明だった。昨日、やっと目を覚ましたと思ったら、君に会いたいって言うじゃないか。酷い目に遭わされたって言うのに…。 君に会わせたら良くなるとは思えないがね、医者の言うには事故のせいで記憶があやふやらしい。ここで、また君に弄ばれた事を思い出したら、治るものも治らない。 良いかい、自業自得だと思って、着いてきなさい。あいつの為にまだ付き合っているふりをするんだ。今日だけで良いから。落ち着けばあいつも冷静になるだろう。今は、全く手がつけられないんだ。」 私は、この人の言うあいつが誰なのかも分からなかったし、そもそも心当たりが無かった。でもちょっと階段から落ちた「あいつさん」は可哀想に思った。 「あの、本当に『あいつ』が誰なのか分からないんですけど。私、田辺美那って言うんですけど、本当にそのミナって人とは別人だと思います。大体、私、付き合ってる人はいません!それに貴方誰ですか!私だけ名乗らせておいて名前も言わないなんて!」 私は冷静に話してたはずが、段々腹が立ってきて、どんどん喧嘩腰になってしまった。 そんな私をじっと見つめていた男は、腕を組むと私を頭の上から下までじっくりと見た。その目つきが服の下までのぞくような眼差しで、私は肌がピリつくようだった。そして、自分が今どんな格好をしているのかを思い出した。
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