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「待ってくださいっ。流石に無理がありますって」
ーー否。拒ム、追放ーー
抵抗するナズナを、エレオネラはぐいぐいと押し続けた。
「妹さん達を悪く言うつもりはありませんけど、く、口を噛むって……」
ーー急シ。休息、残シ三分ーー
エレオネラは本格的に苛立ち始めていた。
「『雫』って、妹さんの体液なんですよね⁉︎ 私が飲んで平気なんですか? 」
ーー不明。故、試シ存ずーー
痺れを切らしたエレオネラは、前足でナズナの顔を掴んだ。
そして目の前にいた幼虫の口に向けて、一気に顔を押し込んだ。ナズナの歯が幼虫の口を噛むと、どろりとした液体が流れ込んできた。
「っ⁉︎ んっ、ぐふっ、へぇ……」
ーー如何なルーー
「……甘いです」
「雫」を飲み干したナズナの体に、不思議な力が満ちてきた。
全身を満たしていた疲労はさっぱりと消え、足に残っていた痛みも無くなった。それは自分は今日一日、何もしていなかったようでもあった。
ーー「雫」、命ノ源。コれ故我ら、戦、士為ーー
「私もこれを毎日飲めば、もっと強くなれるんでしょうか? 」
ーー是。大蟷螂、鬼蜻蜓、鳶頭蜈蚣……如何なル蟲、対等に戦えシーー
ナズナは惚けた顔で、幼虫のことを見つめていた。
エレオネラはその様子を見ながら、静かに顎を打ち鳴らした。
ーー休息は終わりだーー
そこに女王蜂の声が響いた。
ーー草の子に命ず。黄色雀蜂の巣の殲滅、及び幼虫の奪取。尚、この任は危険故、我が王国の働き蜂に付き従うことーー
「黄色雀蜂⁉︎ 大雀蜂の次に強いと言われる、あの蟲と戦うって言うんですかっ? それも巣を殲滅って……」
ーー是ーー
エレオネラは冷静に頷いた。
ーー貴殿、蟲ヲ倒す力あリ。「雫」ノ恵みモ受けしーー
ーー故、貴殿。我らが王国の兵とナり、抗争に参ズべシーー
「雫」で癒された体に、どっと負荷が戻った気がした。
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