第10花「ルナリア」

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「待ってくださいっ。流石に無理がありますって」 ーー否。拒ム、追放ーー  抵抗するナズナを、エレオネラはぐいぐいと押し続けた。   「妹さん達を悪く言うつもりはありませんけど、く、口を噛むって……」 ーー急シ。休息、残シ三分ーー  エレオネラは本格的に苛立ち始めていた。 「『雫』って、妹さんの体液なんですよね⁉︎ 私が飲んで平気なんですか? 」 ーー不明。故、試シ存ずーー  痺れを切らしたエレオネラは、前足でナズナの顔を掴んだ。  そして目の前にいた幼虫の口に向けて、一気に顔を押し込んだ。ナズナの歯が幼虫の口を噛むと、どろりとした液体が流れ込んできた。 「っ⁉︎ んっ、ぐふっ、へぇ……」 ーー如何なルーー 「……甘いです」 「雫」を飲み干したナズナの体に、不思議な力が満ちてきた。  全身を満たしていた疲労はさっぱりと消え、足に残っていた痛みも無くなった。それはようでもあった。 ーー「雫」、命ノ源。コれ故我ら、戦、士為ーー 「私もこれを毎日飲めば、もっと強くなれるんでしょうか? 」 ーー是。大蟷螂(おおかまきり)鬼蜻蜓(おにやんま)鳶頭蜈蚣(とびずむかで)……如何なル蟲、対等に戦えシーー  ナズナは惚けた顔で、幼虫のことを見つめていた。  エレオネラはその様子を見ながら、静かに顎を打ち鳴らした。 ーー休息は終わりだーー  そこに女王蜂の声が響いた。 ーー草の子に命ず。黄色雀蜂(きいろすずめばち)の巣の殲滅、及び幼虫の奪取。尚、この任は危険故、我が王国の働き蜂(ワーカー)に付き従うことーー 「黄色雀蜂(きいろすずめばち)⁉︎ 大雀蜂(おおすずめばち)の次に強いと言われる、あの蟲と戦うって言うんですかっ? それも巣を殲滅って……」 ーー是ーー  エレオネラは冷静に頷いた。 ーー貴殿、蟲ヲ倒す力あリ。「雫」ノ恵みモ受けしーー ーー故、貴殿。我らが王国の兵とナり、抗争に参ズべシーー 「雫」で癒された体に、どっと負荷が戻った気がした。
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