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昔の夢を見た。
夢の中で、僕は美咲とベッドに入っていた。
自宅なのに、二人とも声を潜めて話していた。僕らはいつでも、ベッドの中では囁くように語り合った。
「綾斗は、目標とかってあるの?」
美咲は言った。
「俳優としての」
少し考えてから、僕は答えた。
「一生現役、かな」
「そのためには、ファンを大切にしないとね」
「もちろん。応援してくれる人がいないなら、僕が舞台に立つ価値なんてない。僕は一人でも多くの人に応援してもらいたい。そしてできることなら、死ぬまでずっと、僕を見ていてもらいたい」
「綾斗ならできるよ。私、全力で応援する。綾斗の夢は、私の夢でもあるから」
「ありがとう――」
――夢から目覚めたとき、僕の視界は水没していた。
あふれ出した涙は、枕をびっしょり濡らしていた。
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