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「は……?」
母とはつまり、美咲……?
美咲が、死んだ……?
「事故です。犯人は飲酒運転をしていたクズです。犯人は逮捕され、実刑判決を受けました。それから――」
「ちょ、ちょっと待って!」
僕は悲鳴に近い声を上げ、少年の話を遮った。
「お願いだから、ちょっと待ってくれ……」
僕は頭を抱え、両肘をテーブルについた。
呼吸が乱れて、かすかな吐き気があった。
少年は静かにココアをすすって、僕が落ち着くのを辛抱強く待ってくれた。
「もう、大丈夫」
しばらくして、僕は少年に向かって言った。
「話を、続けてくれ」
少年は頷いた。そして続けた。
「母の葬式はもう済んでいます。僕は今は親戚の家で暮らしています」
父親の元ではなく、親戚の家で暮らしている。
その情報が決め手だった。
僕は全ての真相を悟った。
「ねえ」
僕は言った。
「君の、名前を教えてくれるかな?」
「幸人」
「幸人くん。君は――」
僕は一度唾を飲み込んだ。そして、恐る恐る続けた。
「――君は、僕の息子。そうだね?」
「僕はそう考えています」
この部屋で幸人を正面から見た瞬間から、その可能性は僕の心の中にあった。
なぜなら、幸人の顏は、僕と瓜二つだからだ。
血が繋がっていなければ、こんなに似るなんてありえない。
さらに、彼の目に宿る知的な光。それは、美咲が持っていたものだ。
幸人の表情には、僕と美咲が共存している。
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