僕は君に会いに行くよ

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               *  事情を説明してくれ。  ただ、一言、そう村上に言えば良かっただけなのかもしれない。  でも僕はその一言を口に出すことをためらった。  それは村上を思って、ではない。  自分のためだった。  厄介ごとに巻き込まれたくない。  事情を知らなければ、何も知らなかったで済む。  そんな防衛本能が働いたのだ。  村上は恋人でもないし、親しい女友達でもない。  僕が介入するべき問題じゃない。  そう思いながらも考えてしまう。  帰る家のない村上は、明日はどうするんだろう。  未来はいつもうんと先にあって、ぼんやりと考えるものだった。  でも、村上凜の考えるべき未来は、今夜の、明日の、朝であり昼であり夜だ。  シャワーを浴びて戻ってきた村上はさっぱりした顔をしていたが、僕はいくらシャワーを強くしても次々わいてくる疑問を洗い流すことができなかった。  思い切って聞こうか。  何度そう思っただろう。  だが、聞いてどうする。  今目の前にいる村上を、お前は助けられるのか。  事情を聞けばもう「知らなかった」では済まないのだ。
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