僕は君に会いに行くよ

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 昼に食べたカレーの辛さが今頃効いてきたわけでもないだろうに、胃のあたりが焼けるような熱さでしくしくしてきた。 こんなの、ただの言葉遊びだ。 みんな取り繕ってきれいな言葉を並べて建前のバリケードを築いて本当の心は埋もれっぱなしだ。 やっぱり他人は疲れる。 でも誰とも関係ありませんという顔で、たくさんの人の中で一人でいるのも疲れる。  結局、一番臆病で誰より高いバリケードを作っているのは僕だ。  いっそ全部壊してしまえ。  本当はそうしたいんだろう?  だからあの夜、鈴木と村上の呼び出しに乗ったんじゃないか。  今までと変わらずにひっそり誰とも関わらずにいたければあの時、すぐに断って電話を切ることができた筈だ。まだ仕事中だと簡単な嘘をついてさようなら、今までの自分ならそうしたはずだ。
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