僕は君に会いに行くよ

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 駅の改札を出ると、既に宇津木が立っていた。  きちんとスーツを着ているとちゃんとサラリーマンに見える。スーツマジックだ、と思う僕の隣で村上がつぶやいた。 「こうして見たら案外カケル、恰好いいんだね。びっくり」  宇津木がかっこいい?   驚きだ。そんなことに気付ける心の余裕がうらやましい。 「なんだよお前ら新婚夫婦か」  宇津木の前に並ぶとさっそく嫌味を言われ、僕は無言で村上から離れた。 「冗談の通じねえ奴だな」  舌打ちする宇津木になぜか村上が「ごめんね」とあやまった。 「とりあえず、期待するなよ。敷金礼金なし、五万円以下の物件だからな」 「敷金礼金なし? 本当に?」
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