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もちろん、高校時代からの癖で呼んでいることぐらい僕だってわかっている。だけど僕は面と向かってカケルなんて永遠に呼べない。
「山田? 誰だっけそいつ」
「あんなこと言ってるよ、山田君」
村上の声が少し媚びを含んだ甘いものになっていることにも腹が立つ。
知らん顔をしてそっぽを向いたまま歩いていると「ああ、ここだ」と宇津木は脇に挟んでいたぺちゃんこな黒いカバンから鍵を取り出した。
「外観は普通だね」
「まあ、中は恐ろしく狭いけどな。どうぞ」
ドアを開けて村上が入るのを促した。
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