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「お前も入れよ。見るために来たんだろ」僕の方にあごをしゃくり「なあ、一緒に住むんじゃないのか? そうならもう少し広い部屋を紹介するけど」とにやにやしながら囁いた。
「それはない」
「だろうな」
だろうなって、なんだよ。じゃあ聞くなよ。
「わあ、明るい。ガスコンロは……こんなものよね、うん。洗面所。なるほど」
「築二十年だからついているだけでありがたいと思ってくれ。一応エアコンも付いている」
「ここでいくら?」
「四万六千円。あともうひとつ物件がある。四万五千円で、ここよりは築年数が浅い。築十六年。最近リフォームしたから結構きれいだ。ただ駅からは徒歩十七分かかる」
「こっちは駅からどのくらいだっけ?」
「約十分ってとこかな。まあ、両方見てから決めろ。次の物件に行っていいか」
「お願いします」
靴を履いて外へ出る。
「夕方とは思えない暑さだ」
カバンから取り出した資料ファイルで顔を仰ぎながら宇津木が「えええと、こっち」と歩き出した。頭の上から斜めに照り付ける黄色味を帯びた太陽は僅かに赤味を帯びているが、まだ夕暮れになる気はないらしい。
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