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見比べて迷って村上は結局二つ目の物件に決めた。
「本当に敷金、礼金なし?勤務先も空欄で大丈夫なの?」
「大丈夫。ただ保証人はナシってわけにいかないからさ、親の名前を書いておけよ。まあ便宜上な。保証人サービスの会社もあるけど、勤務先がないと無理だからさ」
「ありがとう。本当はご馳走でもしなきゃいけないところだけど」
「出世払いでいいよ。その時はうんと豪勢に頼む。誰かみたいにカレーとかじゃなくて」
「悪かったよ。僕はあのカレー屋がすごく気に入っていたからさ、まさか宇津木が辛い物が苦手でお子様カレーしかダメだなんて思わなかったんだ。知っていたらもっと別の」
「お前なあ、なんでそういちいちつっかかるんだよ。ただの冗談じゃねえか」
「つっかかっているのはそっちだろう」
「クソつまんねえヤツだな」
あの、やめて? 二人とも、ねえ。村上の声が後ろから聞こえていたが、もちろん無視した。
「そんなに僕のことが気に入らないなら昔みたいに殴れよ」
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