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誰にも会いたくないのに一人になりたくない。個の感情を何と呼べばわからないまま、唯一の馴染みの場所を目指す。
ビルの五階、本が並んだ真っ白なフロアは涼やかな空気と清潔な光を放っていて、僕は目を伏せたまま逃げるようにその一角にある、暗いショットバーに入った。
*
黒い壁、黒いテーブル、ほの暗い照明、これなら僕の顔も目立たないだろう。
椅子に座ると、ほっとした。
「ジントニックをお願いします」
細長いグラスに入った銀色に輝く透き通った飲み物、弾ける泡とスライスされたライムのきっぱりした黄緑色がきりりと美しい。
これを飲めば心も静かにすがすがしくなるように思えた。
しかし酒を飲むのは無理だと悟ったのは一口飲んだ後だった。
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