僕は君に会いに行くよ

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「くう、染みる」  ぎゅっと顔をしかめて耐えた。  この痛みが自分への罰のようにも感じた。  罰? 一体何の罰だ。  自分で自分に問いかけ、笑ってしまう。 「バーボンをロックで」  聞き覚えのあるやわらかな落ち着いた声がすぐ近くで聞こえた。 「かしこまりました」  柔らかな声と黒いテーブルに置かれる真っ白なコースター。  厚みのあるしっかりしたグラスの中で、琥珀色の液体がとろりと沈んでいる。  中で氷がかろんと回る。 「あまり飲まない方がいいんじゃないか。傷に触るぞ」 「大丈夫です」  むしろ痛みを味わいたい気分だった。 「酒は楽しく飲むものだ。それにアルコール度が高くても傷の消毒にはならないよ」 「飲みたい気分なんです」 「穏やかじゃないね。まあ、その顔を見れば穏やかじゃないことはわかるけど」
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