僕は君に会いに行くよ

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 連絡先を交換なんて冗談じゃない、と思っていたのに流れで教えてしまったのは「そうはいっても多分使われることなんてないだろう」「最後にもめるなんてばかばかしい」「どうせもうこれで終わりだ」という考えと多少浮かれた気持ちがあったせいだ。  実際、あの日まで電話が鳴ることはなかったのに。  「想定内、か」  ひりつく痛みを味わいながら少しずつジントニックを流し込む。  住む場所をなくした村上凜、彼女を思い続けるあまりストーカーになっている鈴木弘幸、なんだこいつら十分不幸になっているじゃないか。  知った時は笑い出したい気分だった。
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