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もっと、痛みを味わえ。あの頃のツケを違う形で払ってもらおう。
ずくずくと湧き起こる感情。
知らなかった。
僕の中にはこんなものが詰まっていたのだ。
「結局、何がしたかったんだろう。自分でもよくわからない」
「おかしな話だ。だって君の思い通りに事は運んだはずだ。そうだろう?」
「そうですね。宇津木は罪を認めたし、借りを返してくれた」
「素晴しいじゃないか。《《あのカケルが》罪を認めてあやまり、協力までしてくれるなんて」
横顔のまま彼は笑う。
「それなのにどうして、罪悪感に駆られたりするんだ? 殴られることで何を帳消しにしたかったんだ? 何をどうしたって過去は変わらないし、変えられない。結局、余計に自分が傷ついただけだ。心も顔も」
彼は心臓のあたりを手のひらで抑えた後、切れている唇を指すゼスチャーをした。
「どうしてあなたは僕のことをそんなによく知っているんですか」
「決まっているじゃないか」
彼は目を細めて僕の顔を見た。
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