僕は君に会いに行くよ

128/165
前へ
/165ページ
次へ
 もっと、痛みを味わえ。あの頃のツケを違う形で払ってもらおう。  ずくずくと湧き起こる感情。  知らなかった。  僕の中にはこんなものが詰まっていたのだ。 「結局、何がしたかったんだろう。自分でもよくわからない」 「おかしな話だ。だって君の思い通りに事は運んだはずだ。そうだろう?」 「そうですね。宇津木は罪を認めたし、借りを返してくれた」 「素晴しいじゃないか。《《あのカケルが》罪を認めてあやまり、協力までしてくれるなんて」  横顔のまま彼は笑う。 「それなのにどうして、罪悪感に駆られたりするんだ? 殴られることで何を帳消しにしたかったんだ? 何をどうしたって過去は変わらないし、変えられない。結局、余計に自分が傷ついただけだ。心も顔も」  彼は心臓のあたりを手のひらで抑えた後、切れている唇を指すゼスチャーをした。 「どうしてあなたは僕のことをそんなによく知っているんですか」 「決まっているじゃないか」  彼は目を細めて僕の顔を見た。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加