僕は君に会いに行くよ

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「はい?」  カウンターの内側から店の人間が顔を出す。 「何か?」 「何でもないです。お勘定を」  僕は椅子から降りて財布を出した。           *  子どもの頃によく思った。  一晩眠って起きたら、まっさらになっていればいいのに。  どんなふうにもなれる、新しい僕。   誰とでも大きな声でくだらない話をしたり、廊下でふざけて先生に怒られてもへっちゃらで、休み時間は一人で机の前にじっと座っていたりなんかしない。  みんなの注目を浴びていつだってグループの中心。  そんなふうになりたかった。 
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