僕は君に会いに行くよ

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                *    結局、一番活躍したのはカケルだったな。部屋の中で鈴木がつぶやいた。 「うん。まさかあそこまでやってくれるとは思わなかった」  鈴木の入れてくれたコーヒー(もちろんインスタントだ)をすすりながら部屋を見回す。  他人の部屋に入るという物珍しさに、ついついあちこち見てしまう。  変わったデザインの掛け時計(フレームが透明で時刻を示す数字の大きさがランダムで、長針と短針が浮き上がって見える)円と三日月を組み合わせたつるりとしたゴミ箱(どうやら分別ゴミのために二つに分かれているらしい)白いテーブルの下にはメンズ用のファッション雑誌が置いてある。  いかにもな部屋。 「けっこうおしゃれだね。この照明、北欧家具の店のだろう」 「おしゃれといえばおしゃれなんだけど、すぐに出所がわかっちゃうのが難点だよな」 「すぐわかったらダメなのか?」 「見た瞬間、ああこれあそこのだよねって言われるのはイケてないっつーか」 「自分が気に入っていたらそれでいいんじゃない?」 「自分のセンスに自信があればね」
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