僕は君に会いに行くよ

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 何かを決意したような白い顔で僕を見る。  よく知らない鈴木弘幸という男が一層わからなくなる。  これから何を話す気なんだ。 「どうして村上なんだろう。好きになった相手が村上じゃなければ、きっとオレはこんなふうにならなかったと思うよ」  鈴木は頭を垂れた。 「あきらめようと何度も思ったし、告白してふられてたらすっきりして忘れられるんじゃないかと思った。あきらめるべきだと思ったし、村上に好きな男がいるならもう忘れるべきだと思ったよ。でも無理なんだ。やめようと思ってやめられるものじゃない、忘れようと思って忘れられるものじゃない。だったらいっそ気が済むまで見ていよう。そう思った。盗聴や盗撮も考えた。電気屋で実際にそういったものを探して手に取った時、かろうじて留まったんだ。これじゃあ完全にストーカーだ。もし訴えられたらオレはもう村上を見ることすら許されなくなる」
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