僕は君に会いに行くよ

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「そんなことになる前にどうにかできなかったのか? 住む所がなくなってスーツケース一つ持ってあちこちで寝泊まりする彼女に、どうしてすぐに手を差し伸べてやらなかった? そうすればキャバクラで働くことも(だま)されたりすることもなかったのに」 「お前に言われなくても、ずっと考えていたさ。だけどいきなり高校時代の同級生が現れて事情は全部知っているなんて言われたらどう思う? 警戒するだろう? 気味悪い最悪、二度と目の前に現れないでなんて言われたらどうする? そう思ったら怖くて声をかけることなんてできなかった。もうこれ以上は見ていられない、そう思って勇気を振り絞ってやっとあの日、偶然を装って誘ったんだ」
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